綾(あや)の絹、玉の帯とて惜しからず。
惜しむべきはこの、花の錦(にしき)。
いざや焚け、篝火(かがりび)。
盛りの春、たけなわの時に臨(のぞ)まん。
咲くや木(こ)の花、今宵花咲く。
花咲く枝を折りたまえ。
咲き匂う盛りを愛(め)でたまえ。
折ってかざして舞いたまえ。
御身(おんみ)の少(わか)さに酔いたまえ。
時移れば花散り、
歳(とし)廻(めぐ)りて復(ま)た開くも、
人の身に再びの春は来たらじ。
君よ、短き日を惜しみ、
日、落ちなば燭(しょく)を取りてもなお遊べ。
「過ぎ行く春よ永(なが)からん」と願いたまえ。
花咲く枝こそ折りたまえ。
花無き枝を手に、
君、悔い嘆きたもうことなかれ。