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        『カルドセプト ―"力"の扉―』  


              「 無題 」


          少女よ、わが翼に触(ふ)れよ。
          わが黒き翼に触れよ。
           しなやかなるその腕(かいな)を伸べて、
          たてがみに触れよ。
           絹のたてがみを指にからめよ。

            我は黒き翼を広げ、
         風と共に次元を渡る者。
          黒きひづめもて日月を蹴り、
           刻(とき)の彼方をさまよう者。
           この地にて、そなたに出逢いしは宿命なり。
           我等が見(まみ)ゆるは運命(さだめ)なり。
          我は燃ゆる眼(まなこ)にてそなたを見ん。
          生命(いのち)の熱のきらめき、芯なる焔(ほむら)、
         その紅き輝きに願いを託さん。

         少女よ、そなたに呼び掛けしは我なり。
          熱き吐息をいななきと変え、
           宇宙の果てまでも遠く響かせたる。
          我のそば近く寄りて、
         我をこそ見たまえ。
          清らなる、孤独の少女よ。

           そなたの腕が勁(つよ)き首を掻(か)き抱く時、
          我は大いなる喜びに打ち震(ふる)えん。
         冷えたる腿(もも)が太き胴を締め付ける時、
           我は脈打つ力に満ちあふれん。
            少女よ、口づけせよ、黒き肌に口づけせよ。
           我とそなたの約束をせん、
          秘密の約束をせん。
           わが背に乗れ、そなたを攫(さら)わん。
          黒き翼にて、そなたを包まん。
         黒きひづめ、ひとたび大地を蹴れば、
       我等は無窮(むきゅう)の時に浮かび、永劫(えいごう)の旅を駆けゆく。
          わが全ては常にそなたと共にあり。

          醒(さ)めるなかれ 目覚めるなかれ 歓喜の夢
         目覚めるなかれ 醒めるなかれ 瞬く幻
       覚めてなおも忘るなかれ 約束の日を
         こいねがう、
          そなたと我の約束の日を 忘るなかれと。

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