「 設定のはなし、その(1) 」 (6月10日)

    さて、
    当館「読み物の部屋」にて公開中の作品『カルドセプト―"力"の扉』の構想を練っていた
   頃のこと。最初に悩んだのは、何といっても「カード」と「呪文」の関係についてだった。
    『カルドセプト』のカードが存在する世界に、人が自ら唱える呪文は存在するのか?もし存在
   するとしたら、カードおよび呪文によって実現される力の根拠は同じなのか否か?
    ―ああもう我ながら、人生の役に立たない疑問だとは百も承知。でも物語の屋台骨を立ち
   上げるためには、どうしてもきちんとスジの通った設定を考えておかなければならない問題
   でもある。とにかく考察あるのみ!…で、考えに考えた。
    『カルドセプト』のアイテム(道具)カードにある「呪文カード」は、"巻物"(スクロール)と
   呼ばれている。カードの絵柄も、文字らしきものが書かれた巻物の図である。…んーでもその
   巻物、誰が作って誰が文字を書き込んだんだ?神様が文字書くのか?んなアホな?とまあ、
   見るだに疑問が湧くばかり。
    で、呪文カードが巻物の絵柄であるのは、"ゲームのプレイヤーへのイメージ提供のため"
   と考えてみた。実際にクリーチャーに使わせる時は、巻物そのままが現われるのではなくて、
   クリーチャーが呪文のみを唱える形を取る―と、解釈するのである。
    あ、これならだいぶスッキリできそうだぞ。だいたい、巨人から妖精までクリーチャーの
   サイズは幅広いんだから、ワン・サイズのはずの巻物をいちいち持たせるなんてヘンだよね。
   そうだよ、クリーチャーが呪文唱えるに決まってるよ。―てことでまず取っ掛かりは解決。
    ではでは、クリーチャーがアイテムカードを使って呪文を唱えたりすれば、それを聞いた
   人間は当然、「呪文を唱えれば何かが起きる」事を学習するわけだよね。だったらそのうち
   には、カードを使わず「人間が自分で呪文のみ唱えて何かを起こす」選択は必然としてアリだ。
    ―結論、「アイテムカードによる呪文」と「人(魔力を持つ術者)が自ら唱える呪文」とは
   『カルドセプト』のある世界において両立の可能性高し。てゆうか、人間だったら必ずこれは
   両立させるに違いない。
    さて、そう仮定すると次に問題になるのは「呪文によって現われる効果の源は何なのさ?」だ。
    カードで実現する呪文と人が自ら唱える呪文、どちらも出自は同じと考えている以上その
   根拠だって同じでなくちゃおかしい。現われる効果の"根拠"については、どう考えたら論理の
   つじつまが合うか?
    こちらについては、人が棲む世界とは違う次元に、特別なエネルギーに満ちた世界がある
   ものと考えてみた。カードも呪文も、「向こう側」にあるエネルギーを「こちら側」へと引き出し、
   意味ある形を与える"装置として働くもの"―と、仮定したのである。
    うんうん、この仮定だと論理的に(ホントか?)カードと呪文の両立が果たせそうだな。
    よーしもう一押し、カードと呪文の「働き方の違い」についてもキチンと設定してみよう。
    エネルギーの取り出し方法に二通りのやり方があるのなら、どちらかが一方的に便利
   というのではつまらないな、ドラマ的に。ジャンケンのグー・チョキ・パーみたいに、向き
   不向きが噛みあってる状態にしたいところだ、ここは。
    ―とまあ、そんな目算からひねり出したのが「扉」と「孔」の関係(第3話参照)。
    1) カードは「扉」であり、開ける事さえできれば(呪文よりも)簡単にエネルギーを
      取り出すことができる。取り出せるエネルギーの量および形は、カードの種類に
      より決まっている。
    2) 呪文は「孔(あな)」であり、この孔を穿(うが)つためにはカードを使うよりも大きな
      魔力が必要である。また呪文のつづりは複雑な法則を持ち、使いこなすのは難しい。
       その代わり、カードによって実現するよりも大きな規模でエネルギーを取り出す
      ことができる。加えて、つづりを工夫することでカードにはない呪文の効果を使用
      することもできる。
      ※ただし、呪文で実現できるのは現象のみ。クリーチャーやアイテムといった質量
      を持つものは出せない。
    ふむふむ、これでだいぶイメージが固まってきた。セプターと魔術師との違いについて
   もはっきりしてきたし。
    魔術に関する知識を持たずとも、カードを使って比較的簡単に異時限のエネルギーを召還、
   行使する「セプター」(生息数多し)。
    対して、多くの魔力と知識を駆使し、多様な呪文効果を実現する「魔術師」(稀少)。
    ―以上のように規定すれば、ほぼ矛盾無く『カルドセプト』の世界におけるカードや呪文の
   存り方を想像することができそうだな。よし、これで行こう!

    ○おまけ
    カードを「扉」と考えることで、クリーチャーが本物の生き物だった場合の「個体差」を
   どうするのか?という問題および、どう考えても一体ずつしか居なさそうな魔王をあちこち
   の世界で同時に呼び出したりしたらどうなるのか?との問題もめでたく解決。
    (エネルギーが物体の形を取っているため、同じ種類のクリーチャーやアイテムであれば、
    常に同じスペックのものがカードがある限り出現する―という理屈です)
    でもこの問題、マンガ版ではどう解釈しているのかと購入して読んでみると…あー、2巻
   に呪文を使う魔術師が登場しているけど…「錬金術師の長年の研究により」って、それは
   手抜きの設定だろ〜〜〜!!!ブラックボックスに棚上げして知らん顔するなよ〜〜〜!!
    かなりガックシ、以後ほとんどマンガはチェックしとりませんですよ、はい。



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