舞台=カルドラ宇宙のどこかの世界
登場人物=「女(その世界の覇者候補・新規オリキャラ)」と「男(次元の漂流者)」
女:「あなた知ってる?
勝ち残るのは、より不幸な者の方なの。
一番不幸な者が、一番最後まで残ることができるのよ」
紅い唇が動いて言った。褐色の肌の中、そこだけが別の生き物のように
濃く彩られて蠢(うごめ)く、黒いまでに紅い二枚重ねの襞(ひだ)が。
俺の手に残るカードはなく、"彼女"の傍らに控える「デスゲイズ」の
大きな冥(くら)い眼がこちらを見ていた。
たった一つの目玉が、冷たい微笑を含んで俺を見ていた。
男:「貴様は俺に勝った、カードの覇者となり神となれば幸も不幸も無い、
好きなように己の"世界"を創りあげるがいい」
だが紅い唇はキュッと釣りあがった。
女:「でも本当に一番最後まで残るのは"あなた"のはずでしょうに。
――分かっていないのね、何も。
さよなら 」
"彼女"はクリーチャーをカードに戻し、くるりと踵(きびす)を返した。
行ってしまった、それきり、振り向かなかった。
あの頃、俺はまだ何も知らなかった。
何ひとつ分かっちゃいなかった。
今こそ沁(し)みてくる、"彼女"の言葉の意味。
紅い唇の蠢(うごめ)きとともに、甦る。
「永遠」という頚木(くびき)が、
もうこの首から外れる日は来ないのだ、ということを。
そして、
今日も虚空を隔ててあの冥い眼が
「軽蔑」を込めて見下ろしているのだ、ということも。