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       『 虚無と軽蔑 』

   舞台=カルドラ宇宙のどこかの世界
   登場人物=「女(その世界の覇者候補・新規オリキャラ)」と「男(次元の漂流者)」


    女:「あなた知ってる?
      勝ち残るのは、より不幸な者の方なの。
      一番不幸な者が、一番最後まで残ることができるのよ」

     紅い唇が動いて言った。褐色の肌の中、そこだけが別の生き物のように
    濃く彩られて蠢(うごめ)く、黒いまでに紅い二枚重ねの襞(ひだ)が。

     俺の手に残るカードはなく、"彼女"の傍らに控える「デスゲイズ」の
    大きな冥(くら)い眼がこちらを見ていた。

     たった一つの目玉が、冷たい微笑を含んで俺を見ていた。

    男:「貴様は俺に勝った、カードの覇者となり神となれば幸も不幸も無い、
       好きなように己の"世界"を創りあげるがいい」

     だが紅い唇はキュッと釣りあがった。

    女:「でも本当に一番最後まで残るのは"あなた"のはずでしょうに。
       ――分かっていないのね、何も。

       さよなら   」

    "彼女"はクリーチャーをカードに戻し、くるりと踵(きびす)を返した。

     行ってしまった、それきり、振り向かなかった。





    ―×―×―×―×―×―×―×―



     あの頃、俺はまだ何も知らなかった。
     何ひとつ分かっちゃいなかった。

     今こそ沁(し)みてくる、"彼女"の言葉の意味。

     紅い唇の蠢(うごめ)きとともに、甦る。

     「永遠」という頚木(くびき)が、
     もうこの首から外れる日は来ないのだ、ということを。

     そして、

     今日も虚空を隔ててあの冥い眼が
     「軽蔑」を込めて見下ろしているのだ、ということも。


                                  ―― 終 ――
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