彼は「指輪」を拾った。
"力"に通ずる「指輪」を拾った。
それが偶然だったのか否かは、
誰にもわからない。
ただ、拾い物を手のひらに乗せ、
飽かず眺め続ける。
ひたすらに見入る、彼は、
手にした「指輪」、輝ける大いなる"力"を。
けれど、その手の中にあってなお、
「指輪」は、決して彼のものではない。
その「指輪」は、ついに誰のものにもならない。
常に誰のものでもない。
あふれる熱を奥深く閉じ込め、
冷んやりと静かに、全ての視線を跳ね返す。
彼は「指輪」を欲するだろうか。
"力"を我がものにと、望むのだろうか。
それとも、「指輪」の真の姿を
見出すことができるのだろうか。