少女よ、わが翼に触(ふ)れよ。
わが黒き翼に触れよ。
しなやかなるその腕(かいな)を伸べて、
たてがみに触れよ。
絹のたてがみを指にからめよ。
我は黒き翼を広げ、
風と共に次元を渡る者。
黒きひづめもて日月を蹴り、
刻(とき)の彼方をさまよう者。
この地にて、そなたに出逢いしは宿命なり。
我等が見(まみ)ゆるは運命(さだめ)なり。
我は燃ゆる眼(まなこ)にてそなたを見ん。
生命(いのち)の熱のきらめき、芯なる焔(ほむら)、
その紅き輝きに願いを託さん。
少女よ、そなたに呼び掛けしは我なり。
熱き吐息をいななきと変え、
宇宙の果てまでも遠く響かせたる。
我のそば近く寄りて、
我をこそ見たまえ。
清らなる、孤独の少女よ。
そなたの腕が勁(つよ)き首を掻(か)き抱く時、
我は大いなる喜びに打ち震(ふる)えん。
冷えたる腿(もも)が太き胴を締め付ける時、
我は脈打つ力に満ちあふれん。
少女よ、口づけせよ、黒き肌に口づけをせよ。
我とそなたの約束をせん、
秘密の約束をせん。
わが背に乗れ、そなたを攫(さら)わん。
黒き翼にて、そなたを包まん。
黒きひづめ、ひとたび大地を蹴れば、
我等は無窮(むきゅう)の時に浮かび、永劫(えいごう)の旅を駆けゆく。
わが全ては常にそなたと共にあり。
醒(さ)めるなかれ 目覚めるなかれ 歓喜の夢
目覚めるなかれ 醒めるなかれ 瞬く幻
覚めてなおも忘るなかれ 約束の日を
こいねがう、
そなたと我の約束の日を 忘るなかれと。