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      『カルドセプト ―"力"の扉―』 


         「 独白 3 」


       傷を探る。
       私の手はあなたの傷を探る。
       今も震えながら血潮に濡れるそこを
       指でなぞり、開き、目を細めて 私は
       ひくひくと蠢く苦痛を眺めている。
       触れるたびあなたはうめき、時に高く悲鳴を上げ、
       身をそらせ のたうち よじって隠そうとする。
       けれども私の手は容赦しない、
       遠慮なく一番敏感な部分に指を伸ばし、つかみ出してしまう。
       ――奥底で熱し脈打つ「記憶」と「意識」と「欲望」、
       私が最も知りたいもの、見たいものを。

       これ以上求めたら、あなたは壊れてしまうだろうか。

       "壊れてしまったっていい、
        壊れてしまえばいいのよ、きっと"

       私の中で"私"がささやく。
       ひび割れた深い傷口、
       めくれあがったその縁(ふち)を丹念に指でなぞる、
       うめくあなたの声を耳に受けながら。

       "壊してしまいたい、
        バラバラになってしまえばいいの、いっそ"

       あなたの苦悶を握り締めて
       私はつぶやく、その痛みを自分の芯に突き立てる。



       私の手はあなたの傷を探る、
       探るうちにいつしか あなたとひとつになっている。
       深く、深くひとつに。

       あなたが壊れてしまえば
       私もまたバラバラになって、
       二人入り混じりながら 地面の上に
       転がり、散りばめられるでしょう。



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