ほころびかけた薔薇のつぼみ。
淡く色づいたそのいただきを、わたしは
唇の先でそっとついばみ、ついばみ、
やがて舌をのばし重なり合う花びらを押し分けて、
匂やかな深みへと入り込んでしまう。
ちろちろと舌先をうごめかせ
薄いひとひら、ひとひらをまさぐり、付け根を撫で、そうして
ついに奥底の花芯へと至る。
まだ、たれにも触れられたことのない、震える場所。
すでにたたえられた蜜を、わたしは
すくい取り、すすりあげてむさぼり、味わい
熱く痺れた舌をさらに執拗にのたうたせ
甘い粘液を花びらの内側にもなすりつけてまわる。
みどりの薔薇の茎、
わたしの手が握るそれは棘を立てて指を、肌を刺す。
茎に葉に生ふる細く鋭い爪、断末魔の如くに痙攣させ
なぶり主の身体にあまたの引っ掻き傷をつけながら
花びらの重なりをすぼめ、肉厚の侵入者を深く強く押し包む。
『止まれ』
秘めやかな呪文の言葉、胸につぶやきつつ
陽光の輝く眼を逃れ
わたしたちはなおも、湿った影のふところを求めてむつみあう。