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      『 カルドセプト ―"力"の扉― 』


      第10話 「 秘密 」 (1)


    「それだけカードを使えるのにまだわからないのかい、キミには。いや、本当はわかって
    いるのに気づかないフリしてるだけなのかな?」
    口元に憐れみとも苦笑いともつかない微妙なさざなみを浮かべ、かつてその"少年"は彼に
   向かって言った。
    「何のためにボクらが物や事を感じ取れるようにできてると思ってるんだい?それとも何
    かな、キミは感じたり考えたりしないで一から十まで神さまに助けてもらって生きたい
    とでも思ってるのかな?
     "傷ついた"って大声で叫んでるね、いつも。でもそれがボクらだ、傷つく心がある
    から変わることだってできるんだよ。そのことがわからないようなら、キミはいつまで
    たってもボクには勝てない。ボクだって、そんなキミなんかに金輪際負ける気はしないね!」


    ―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―×―


    ――シャッ……
    微(かす)かな音が走った。分厚く茂る梢の葉先を引っちぎり、飛礫(つぶて)の影が飛ぶ。
    ――キンッ!
    弾いた、緑陰に閃(ひらめ)く光の半円、澄んだ金属音のみを虚空に突き返す。
    ――パラン、カラカラカラ……
    叩き落とされ、石ころは木々の葉や幹にぶつかって軽い音をたてた。貫く威力を削がれ、
   もうすでに下草と落ち葉の中か。
    『速くなったな』
    深い森の中、常緑樹の硬い葉の陰にひそんでゼネスのトロルは周囲をうかがった。"緑の
   髪の少女"の白い肢体は視界から消え、右手の「隼の剣」を握り直して聴力を極限まで研ぎ
   澄ませる。
    樹皮のすぐ下に息づく無数の樹液の管、森の木々の一本一本が吸い上げる水の流れの音
   に耳を傾ける。大量に行き交う響きの中に、ひとすじの少女の「足音」を追いかけて。樹木
   の精霊、ドリア―ドの「木渡り」の気配をつかむために。
    しかし、
    「――後ろだ!」
    ようやく突き止めた瞬間、だがトロルはそのまま横跳びして逃げた。「シパッ!」葉が打ち
   抜かれる音、垂れたつるをつかんで振り向けば、先刻まで立っていた枝にひらひら、丸く
   穴の空いた手のひらほどの葉が揺れる。
    「チッ」
    トロルからは離れた場所の大樹の根方に背をかがめ、ゼネスは舌打ちしながらも苦笑い
   をもらした。
    「さすがに上達すれば"同じ手"は食わんか」
    以前に別の森で弟子=マヤの操るドリア―ドと対した時には、隼の剣でトロルの五感の
   働きを高めてやれば十分に彼女の動きを追うことができた。
    しかしあれからいささかの時を経て、弟子の技量も大分に上がっている。木から木へ、
   からみあう根と樹液を伝って移る森の精霊の「木渡り」の技。気配をひそめ速度を上げて、
   もはやそうやすやすとは尻尾をつかませてはくれない。
    太い横枝の上に立ち、トロルは神経を張り巡らせる。相手の得物は投石器(スリング)だ、
   間合いが離れている限り、こちらは成す術なく追い立てられるばかり。
    『"電光"でヤツの出る瞬間を狙うか……いや、それはそれで』
    業腹なことだ、と肚の内につぶやく。師匠としてはここはあくまで、クリーチャー操作
   の技術だけで彼女への接近を果たしたい。
    『必ず近づき、そして捕らえる――』
    彼の胸中にはその決意があった。魔術師宅を辞してかれこれ五日がほどは経つが、相も
   変わらずゼネスとマヤの師弟の間で会話はごく少なく、ぎごちない関係が続いている。
    そこでゼネスは、あえて人気の無い場所を旅の進路に選んだ。カルドセプトのカードを
   使う「稽古」を、集中的に弟子につけてやるという口実のもとに。
    だがもちろん、本当の目的は他にある。「カードの力は嘘をつかない」――セプターであれ
   ば誰もが真実と認める実感こそが、彼にとっては今、弟子の少女を「知る」ための最も確か
   な手掛かりだ。緑の髪の少女=ゼネスのただ一人の弟子であるマヤ、彼女の内奥に触れたい
   のであれば彼にできる方法は、やはりカードの戦いを通じて向き合うこと以外に無いだろう。
    トロルの耳、トロルの眼、トロルの鼻、皮膚もそしてヒゲや毛の先端までも、ただ今は
   ひたすらに、全ての感覚が少女の精神の動きを追って冴えかえっている。
    『……それに呪文を使うより、もうしばらくはドリア―ドを泳がせておいた方がこちら
    としても都合が良さそうだ』
    弟子の戦いぶりを見ながら、彼の戦略はすでに固まっていた。あとは実行に向けて着々、
   手を打ってゆくのみ。
    (真向勝負ばかりにこだわっていた以前のゼネスとはいくぶん様変わりして、最近の彼
   は辛抱しながら機会を待つスタイルも採用することができるようになっている。――ただ、
   彼自身はしかし、自分のそうした変化への自覚は薄かったが)
    ザザン、ザザザザザザ……
    風が強くなってきていた。木という木が先端からなびくように大きく揺らぎ、枝先の葉も
   擦(こす)れてわさわさ、中空を掻き混ぜる。
    そして暗い、木の下闇以上に空が暗い。厚く垂れ込めた雲の色が、急速に重い灰色へと
   その色味を濃くしてゆく。
    ゴロゴロゴロ……
    遠雷が鳴った。空が孕んだ力のぶつかり合う音、遥かな高みから響きを落としながら、
   なおも空いっぱいをどよもし地上の者どもに恐れを抱かせる。
    だがゼネスは、天候の変化ぐらいで稽古の中止をするつもりは毛頭なかった。「セプター
   たる者は常に、周囲の環境を己が手段の一つと心得るべし」――が、彼の信条だったので。
    そのため師のトロルも弟子のドリア―ドも、鬱々と夜に似た闇に沈んでゆく森の木々の
   間にあってなお、互いに追いつ追われつの対戦を続けていた。
    さて、梢も葉の繁みも次第に宵の口のような暗さに満たされてみると、状況はどうやら
   トロルの側にその利を増しているようだった。
    この毛むくじゃらの怪物の眼は暗闇の中でもよく効き、さらに聴力はもちろんのこと、
   臭覚も獣並みに鋭い。その一方で森の少女の五感の働きはといえば、植物の識別に優れる
   ことを除いて概ねは人間と変わらない。あまり暗くなり過ぎれば、彼女の眼ではせっかく
   の飛び道具(投石器)も狙いが定め難くなってしまう。
    かといって少女が不用意に怪物に近づこうものならば、すでに彼女の足音や体臭を熟知
   しているゼネスのトロルにたやすく察知され、迎え撃たれてしまうだろう。つまり、今は
   トロルの攻め時、ドリア―ドは我慢のしどころだ。
    「ピカピカッ」頭上彼方の雲の底に光の蛇が走った。多頭の大蛇がボキボキと折れ曲がり
   くねってのたうつ。
    「ドドッ……」また風が来た、一斉に木々の梢が伏しなびき、葉という葉が擦れあう。
   「ザザザァーーー」その音にまぎれるようにして、トロルは薄闇の中を枝伝いに移動を始めた。
    こちらが有利な状況になったとはいえ、油断は禁物だ。それは相手がセプターであろう
   が魔術師であろうが、いや、何の特殊技能を持たない一介のただ人であったとしても変わ
   らない、戦いの鉄則である。
    今日の稽古では、クリーチャーは一体だけの使用で全てをまかなうように、と弟子には
   事前に言い渡した。マヤはどんな手を打ってくるだろう?――ゼネスは今、そのことを考え
   ている。
    『トロルの位置がつかめない限り、飛び道具や直にダメージを与える呪文の攻撃は使え
    ないはずだな。有効なのは広い範囲にある程度の被害を与えることのできる呪文の効果
    (大嵐など)だが……あいつのことだ、関係ない森の木や生き物にまでを傷つけるような
    マネは慎むだろう。
     ――であれば、雲が晴れるまでひたすらガマンかそれとも、むしろあえて"打って出て"
    くるか……』
    そこまで考えた時、トロルの神経にある気配が引っ掛かってきた。前方のやや離れた木
   の枝(トロルの跳躍範囲よりも、ほんの少し外側!)に白い顔と肢体が浮かびあがった。
   見えたと思えばサッと右の腕を振り、飛礫を放つ。
    「来たな!」
    やはり打って出てきた、『それでこそ俺の』――ゼネスの血がカッと歓びにたぎり立つ。
   トロルも瞬時に腰を沈めて短剣を振るった、「カンッ!」石を弾く、返された飛礫が右斜め
   前の幹に突き刺さる。
    が、怪物の視線が追うのはドリア―ドのみ、裸足が枝を蹴り、消えた。「木渡り」だ、しかし
   この距離であれば追うのはたやすいはず。
    「そっちか!」
    振り向き、後方に大きく跳躍した、がっしと張り出した楡の太枝を足指がつかみ、その
   すぐ先に少女の影が。否、今しもにじみ出てくる影に向け、素早く腕を突き出した。だが
   届かない、わずかに触れ得ない、黒い爪が空を掻く。白い顔の中で紅い唇が笑み、再び
   消えた。虚空に去る花の幻。
    「むむ……」
    口惜しい、
    「次は何処だ?」
    耳を澄ませ、さらに上方の枝に飛び移ろうと見上げて、しかしハタと思い止まった。
    「これは――」
    また上空に稲妻が走った。ほんの一瞬だけ強い光が射し、森の木々の頂きを照らし出した。
    高みに昇れば「光」に遭う。その事実が何を意味するのかと言えば――。
    「ふん、マヤめ、そんな誘いには乗らんぞ」
    ゼネスはつぶやき、ニヤリと片頬をゆがめた。トロルもドリア―ドを追うことなく、そのまま
   下方に跳んで別の枝へと移る。
    弟子は森の少女の身をわざと晒すことで木々の上方の枝、より明るい場所へと師をおびき
   出すつもりなのだ。トロルの攻撃をギリギリでかわせる距離を保ち、相手に"追わせる"作戦。
    「なんの、それなら俺はお前のウラをかいてやる、反対にお前に俺を追わせてやるぞ」
    葉陰から葉陰へ、ひと跳び二跳びと跳躍を繰り返して枝を渡り、ゼネスのトロルは樫の
   大樹にたどり着いた。
    それはこの森で最も歳経た樹、高さこそ他の木にわずかに譲るものの、幹回りときたら
   トロルの腕をどれだけ伸ばしてもとうてい抱えきれない、どっしりと堂々たる貫禄のある樹だ。
   周囲に広く根を張り伸ばし、ドリア―ドの気配を探る上でもうってつけである。
    ザラついた木肌にぴたりと耳をつけ、息をひそめる。慎重に樹の命の音に聴覚を傾ける。
    ――聞こえてきた、「ゴウゴウ……」と流れの音、木の根から逆しまに駆け上る水の響き、
   全ての枝に葉につながり行き渡る通い路。根から入って幾千万の葉を押し広げ、ついには
   空へと放たれる秘密の、見えない川がそこに。
    途切れることのない流れにトロルの感覚をひたし、かれの耳を通じてゼネスは一心に探った。
   樹木の生命を介して移り渡る、緑の髪の少女の密やかな足音、さらには彼女を操る歳少い
   術者(セプター)の居場所までをも。
    ドリア―ドの木渡りの経路をつかみ、しかしわざと追わずにむしろ離れるそぶりを見せる
   ――ゼネスはそう計画していた。師が追ってこないと気づいた弟子はどう出るか。追って
   くるまで待つか、それとも彼をどうでも誘うため、危険を冒してさらなる接近をはかるのか。
    だがその時、突然樫の木の鼓動が乱れた。ブツブツ、樹液の流れが不規則に途切れ、川が
   痙攣する。枝葉も幹も細かに震え、ゾクゾク、木肌が縮かんだ。これは「恐れ」、間違いない、
   大樹が露わにした何者かへの戦慄の表象だ。
    『――雷(かみなり)!』
    気づいた、慌てて幹から身を離し、耳をふさいで枝の上に伏せた。瞬間、森の全てが強烈な
   閃光の下敷きとなった。
    タァァン!!!
    轟音が、衝撃がトロルの全身を打った。すぐ近くの木に落雷したのだ。
    圧倒的なエネルギーだった。カードにもある呪文「ライトニング(雷電)」の効果に数段
   といわず勝る威力。体がすくみあがって動けず、耳鳴りもひどい、固く耳をふさいでいた
   にのもかかわらず。さらに鼻を突く、割り裂かれた生木が焦げる臭い。
    だが、被災直後のこの惨状の渦中にあってなお、トロルの感覚はある一つの情報に惹き
   つけられていた。彼にとり、非常に重大な意味を持つ情報、女の悲鳴。
    「ゼネ〜〜ス!」
    確かにそう聞こえた、力を励まして怪物の首を上げ、空を仰ぐ。
    「あっ!」
    覚えずゼネスもまた叫んでいた。黄色い眼に映ったのは一個の影、落ちてくる、長い髪
   をなびかせて墜落してくる少女の姿。
    『弾き出されたか――』
    雷に直撃されたのは、ドリア―ドが隠れていた木だったのだ。そのショックで彼女は木
   から"放出"されてしまった。
    「マヤ!」
    考えるよりも早くトロルは動いていた、瞬く間に体に力が漲り、枝を蹴り飛ばして踊る。
   邪魔な短剣は放り捨て、毛むくじゃらの怪物は交差する枝々を抜け、高く宙に舞っていた。
   腕を極限まで伸ばし、爪の先の先にまで神経を張り詰めて、今落ちてくる少女にこの手が
   届くようにと願いながら。
    果たして、彼の挑戦は実を結んだ。辛うじて黒い爪の端に木の葉で綴った衣装が引っ掛
   かった。トロルはそのまま足場の無い空中で渾身の力を込め、腕を手繰った。細い身体を
   引き寄せ、そのまましっかりと胸に抱きしめる。
    そうして今度は二人共に落下を始めた――下へ下へ下へ下へ――
    ――ガザザザザザザ…………!!
    抱いた少女を精一杯にかばい、怪物は己の頑健な身体を盾にして、幾本もの枝が複雑に
   からみあう藪の中に背中から落ち込んだ。


    「グ……グ……ウゥ……」
    どうやら体が止まったと察し、身動きしようとしたトロルは苦痛の声をもらした。左の
   肩から背にかけてが砕けるばかりに痛む、どうやら骨が折れている様子だ。
    彼らが落ちた藪はつる性の樹種であり、枝はしなやかで勁(つよ)かった。おかげで地面
   に叩きつけられる仕儀だけはまぬかれたが、ドリア―ドを守るためあえて下敷きになった
   トロルは、さすがに相応の痛手を受けてしまっている。
    それでも、一度身を揺すぶるとひどい痛みは速やかに退いた。トロル特有の能力である
   「再生」が発動し、骨折も打撲もたちまちのうちに治って元の屈強さを取り戻した。
    かくして傷が癒えると、長い耳と色黒のゴツゴツした顔を持つ醜い怪物は、己が胸の内に
   抱いた少女を注意深く見つめた。
    彼女の表情はだが、未だうかがい知れなかった。白い顔は彼の広い胸板、剛い毛がモジャ
   モジャと生えた中に埋められていたからだ。震えもせず気を失ったわけでもなく、少女は
   怪物の腕に抱かれたまま静かに深い呼吸を繰り返している。
    『お前は、誰だ?』
    ゼネスは集中を高めた。
    トロルの五感が彼の内に流れ込み、森の妖精の身体の感触を伝えてくる。ゆるやかに
   巻いた緑の髪は若葉の香りに満ち、ミルク色した肌は白い茸のように柔らかい。抱きしめた
   胴体もしなしなと繊細で、それでいて芯には弾力をたたえている。さらに、馥郁(ふくいく)と
   立ち昇って鼻を打つ芳香――甘たるく湿った匂い、ドリア―ドの体から放たれる匂い……。
    この少女は悦楽そのものだ、触れればすなわち陶然として意識が端からとろけてゆく。
    こうして求めていた「花」を手中にし、その香りに包まれるうち、遣い手であるゼネスの
   中にさえ、沸々としてある"衝動"が湧き起こってきた。彼はその衝動に命ぜられるまま、
   腕の中の相手をさらに強く掻き抱こうとした。
    『待て――!』
    しかし脳髄の奥底から「声」が掛かった。厳しく意識を呼び覚ます直感、ゼネスの闘争心。
    『こいつはまだ、戦う意志を手放してはおらんぞ』
    ハッと目を開けた。そうだ、ドリア―ドはまだカードに還ってはいない。この少女の主
   たるセプターは今、何を狙って待っているのか。
    とたんに頭がハッキリと冴えた。トロルは妖精の肩を抱いたままそろそろと、極めて慎
   重に右の手を動かしかけた。
    彼の胸にしがみついている彼女の細いのど首をつかみ、締めあげるために。
    『ム……』
    だが怪物の動きは止んだ、彼の背中を誰かがゆっくりと撫でている……ドリア―ドの手。
   しなやかな指が硬い毛をかきわけ、下から上へ、皮膚の敏感な表面をしっとりと、泌みる
   ばかりに撫であげてくる。官能を直に刺激され、怪物は耐え切れず身を震わせて呻(うめ)いた。
    瞬間、ドリア―ドが顔を上げた。その眼は鋭く、酷薄なまでに冷静だ。
    「ウゥゥ……」
    チクッ――トロルの背の中心に針で刺すような痛みが走った、と同時に急速に身体の感覚
   が失せてゆく。視覚や嗅覚は変わらずあるのに、首から下が痺れて手も足もだらりと投げ
   出された。ゼネスは「手遅れだ」と悟るしかない。
    少女はサッと跳んで怪物の胸から離れた。その右手の爪が灰色に長く伸びている。これ
   はカードの力の一つ「屍食鬼の爪(グールクロー)」、傷つけた相手の体を麻痺させ、生ける
   屍と化してしまう恐るべき道具だ。
    緑の髪の妖精のとび色の瞳は、座り込んだまま動けずにいる怪物をチラと見た。右の手
   が輝いて爪は消え、入れ替わりにひと振りの大剣が現われ出る。白い両手で柄を握り、肩
   にかつぐようにして構えた。
    そのまま、彼女は今度は"獲物"の黒い顔をひたと見つめる。それはひどく緊張した、血
   の気の薄い青ざめた表情だった。ほっそりとたおやかな肢体には不似合いな剛剣の輝き。
   それでも絶大な集中力はなお、全てを一つに収束させ得る。少女の脚も腰も腕も、大剣と
   ひと続きとなってもはや微動だにしない、白刃の内に時が凍る。
    「カッ」と周囲が光に満ちた。瞬間、少女は体を旋回させて剣を振り下ろし、トロルの首を
   刎(は)ねた。

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